リボラン20×24

















表現不可能 !









クラゲに模した月が真っ暗な海底を泳ぐかのような冬の夜。
細く暗い一本の路地裏、入り組んだそこは月の光により青白く照らされている。
ふと深い暗闇の中から、月に照らされた僅かに明るい場所に二人の影が生まれ出た。
二つの影は、気配を殺しながら細い道を足音さえ響かせずに走り抜けていく。 すぐ後ろからそれを追う一つの足音。
二人の内の一人が、頭のボルサリーノを更に深く被り表情を隠しながら小さく舌打ちをした。 そして横を走る、頭に角を付けた青年に非難がましい視線を送った。


「お前のせいだぞ」
「なんでさ」
「お前がヘマしなきゃこんな面倒な事にはならなかった」
「なっ…今回は明らかにリボーンの下調べ不足だろ!? あんな所に隠し部屋があるなんて聞いてない!」
「それ位臨機応変に対応しろ阿呆牛」
「……っあんたなぁ!」


ピタ、と二人の足が地面に吸着したかのように突然止まる。
それと同時に懐にしまった銃を目にも止まらぬ速さで取り出し、お互いに突き付けた。
カチャリ、撃鉄が下される音が静かな空間に響く。
二人の周りをぴりぴりとした殺意が取り巻き、それを月が素知らぬ顔で照らしている。
沈黙を先に破ったのは角を付けた青年。彼は何かを懐かしむようにに目を細め、口を開いた。


「俺はね、リボーン。あんたと対等になりたかったんだ。 こんな風に、お互いがお互いに銃口を突き付け合うような状況を夢見てた」
「…それは良かったな」
「だけどどれだけ待ってもあんたは俺を相手にしなかったし、殺しもしなかった。 昔は、あんたが俺をどう思っているのか何度も聞こうと思ったよ」
「……そうか」
「うん。でもある日ね、それは無駄な事だと悟ったんだ」


青年は笑っていた。真意の読めないその頬笑みは、月明かりに照らされ美しくも、不気味にも見えた。
リボーンと呼ばれた男も笑みを浮かべている。せせら笑うかのようなその笑みもまた、真意は読めなかった。
不意に二人を中心に渦巻いていた殺気が膨らむ。恐らくここに一般市民が居合わせたものなら腰を抜かしてしまうような、 そんなぴんと張り詰めた緊張感。


「死ね、リボーン」


どちらからともなく銃の引き金を引いた。暗い鬱蒼とした空間に二つの乾いた銃声が轟く。

間もなくしてドサッと二人の人間が地に伏した。眉間には本来存在する筈のない寒々とした穴があいている。 焦点の合わない瞳は果たして最後に何を映したのであろうか。
先ほどまで生き物であったものの体液が行き場を失ったかのように路面を濡らし 、青白い月明かりを受け鈍く光りを放っていた。


「あーあ」


そう呟いた青年は自らの後ろを振り返り顔を歪めた。その表情はどこか悲しみを含んでいる様にも見えたが、 目を数秒閉じ、次に開いた時には、ペリドットの瞳からそんな感情は消えていた。
そして銃を再び懐に収めている黒の青年を見つめる。死体はその青年の後ろにも転がっていた。
ふふ、と笑って口を開く。


「ランボさん一瞬本当に殺されるかと思っちゃった」
「俺はお前がちゃんと仕留められか心配だったぞ」
「心外だな、そんなヘマはしないよ」
「どうだか」


血だまりの真ん中でそんな軽口をたたき合う。
硝煙の匂いが鼻をかすめ、辺りに霧散した。


「なぁ、ランボ」


路地の壁に寄りかかりながらリボーンが口を開いた。
同じようにその正面の壁に寄りかかっていたランボが先を促すように視線で返す。


「もし俺が今、先ほどの質問をしたらお前はなんて答える?」


先ほどの質問?と角の青年の頭に疑問符が浮かぶ。
暫く沈黙を守った後、ああ、『俺をどう思ってる?』ってやつかと合点し、にやりとした笑みを浮かべた。


「……さぁ?とても言葉にはできないね」
「……ならいい」


答えを受けた青年は、その答えに満足したかの様に同じくにやりと笑った。
二人、血だまりの真ん中で悪戯に笑い合う。






(『愛』が最上級の慕情だと人々は口を揃えて言う)

(だが残念ながらそんなチンケな言葉では)






「ti amo ランボ」















殺伐としたこの光景には目もくれず、二人口づけ合って

偶には気休めの言葉でも吐いてみようか。




















fin.

09.02.08
加筆修正 09.03.01








ti amo=愛してる 迷惑バカップル。公害とか最早そんなレベルではないですよ、ね!